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美奈見の湯 2015年3月末設備劣化により閉店(現在は保育園)
2014年4月~2015年3月末運営 大田区
当浴場オーナーが高齢化につき、自身での銭湯経営を辞めて、第三者に貸し出し存続していた大田区中央の銭湯であった。
その賃借人運営者も高齢化し、新たな運営者を探す相談を当社で受けた。
売上数字を検証すると売上規模は小さく、既存のクライアント(温浴施設経営者)が経営に乗り出すことはなく、異業種では検討に値しないことから自社での経営を決断。
今でこそ、自店のHPを持つ銭湯が増えましたが、定休日や営業時間の情報提供が進んでいなかった銭湯業界。
物価統制の対象であるが故に、銭湯側としては「当たり前の入浴料」も日頃銭湯を利用しない方は知らなくて当然であり、営業時間と料金の情宣が重要との結論に至りました
駐車場が2台しかないことから、店の前を通る方を見込み客と想定し、店舗の外壁に営業情報を掲示しました。
朝風呂にはニーズがあるという確信と折角来てくれたお客さんが定休日で入浴できない失望感に対する恐れから、定休日ナシの年中無休営業を決断。
定休日であった月曜日の客数は、当初少なかったが徐々に盛り返し他の曜日と遜色ない客数となった。
朝風呂は平日苦戦、土日盛況のスタートから、平日も損益分岐を超え、土日は大盛況という結果となりました。
利用者目線で考えた場合に、「そんなことまで店側に命令されなくてもわかるわ!」という自身の感情を優先し、基本的に張り紙は撤去し、利用者性善説を貫きました。
トラブルゼロでは、ありませんでしたが、注意書きを撤去したことにより発生したトラブルはありませんでした。
毎日来てくれるお客さんへ感謝の気持ちを形で示す。
来店頻度の少ないお客さんの少しでも満足度を上げて来店回数を増やす。
初めて来てくれたお客さんに銭湯入浴の手軽さをアピールする目的で実施しておりました。
浴場内で客数が極端に少なくことがありませんでしたので、盗難被害はありませんでした。
利用者目線で考えた時に、ドライヤーが有料なことが問題なのではなく、裸に近い状態で財布から10円玉を取り出すことが面倒で、10円玉がなかった場合にさらに面倒であることを考えてドライヤーを無料としました。
今のようなサウナブームではなかったので、サウナのよさを知っていただくためにもサウナを無料開放すべきと考えて開放しました。
経費的負担は大きかったですが、水分補給という安全上の対策を重視して提供しました。
冷水器という選択肢がありましたが、冷水器=水道水なので「自分では水道水を飲まないのにお客さんに水道水を飲ませてよいのだろうか?」という気持ちが勝ちました。
フロントにウォーターサーバーを置くことによって、入店者への入浴前の水分補給の呼びかけ、入浴後の水分補給の呼びかけをすることができるので、お客さんとのコミュニケーションが取りやすくなりました。
近所の園児は無料で対応しておりました。
将来の見込み客という考え方よりは、ご両親が休みの日に家族で入浴に来ていただける可能性があるとの目論見もありました。
結果的には、収益の目論見よりも、園児たちが来てくれることにより、スタッフも相客も優しい気持ちになれることが最大の収穫でした。
また「小学生大歓迎」の掲示をし、小学生だけでの来店を歓迎しました。
この当時は、待機児童問題が行政の大きな課題となっておりましたが、共働きが主流となる中で小学生の居場所としても地域住民が主な客層である銭湯が適していると判断いたしました。
小学生だけの常連も増え、フロントでゲームばかりしているとスタッフに「ゲームばかりしてないで他の遊びもしなさい!」等怒られるのも平和的な風景でした。
朝風呂にはニーズがあるという確信と折角来てくれたお客さんが定休日で入浴できない失望感に対する恐れから、定休日ナシの年中無休営業を決断。
以前、定休日であった月曜日の客数は、当初少なかったが徐々に盛り返し他の曜日と遜色ない客数となった。
朝風呂は平日苦戦、土日盛況のスタートか年中無休で6時~13時、15時~24時の営業ともなると、シフト制での勤務となります。
業務引継ぎノートをあえて「顧客創造ノート」と命名し、お給料は、会社から支給するのではなく、入浴料金の分配であることを周知し、どのように来店者に感謝の意を伝えていくべきなのか?を問う形式としました。
自身の行動がお客様の増加という形になることで、より親切な接客につながるという好循環を生み出すことに成功しました。
ら、平日も損益分岐を超え、土日は大盛況という結果となりました。
設備劣化により2年間での閉店となりましたが、運営期間中の追加設備投資なしで、月1万人以上の繁盛店を創造することが出来た成功事例と言えます。
松の湯
2015年7月~現在まで経営中 墨田区
店主が病気で閉店して2か月経過したころ、当社へ打診あり。
美奈見の湯での成功があり、同様の取り組みをすれば再生可能という目論見で経営をスタート。
病室の前店主を見舞うと「1日の売り上げは2万~3万円だよ」という言葉を何とか聞き取ることが出来た。
当浴場の所有者は、別法人で全店主も賃借経営者であった。
全店主から聞き取ることが出来た売上金額と家賃を鑑みると既に経営が成り立っていなかった。
小さな主浴槽+二人しか入れない薬湯+一人用の水風呂に壊れかけのミスサウナという設備。
熱源は廃油バーナーと薪のハイブリッド。
地下水なし。
設備の老朽化もあり、お湯に鉄さびが出る。
白が基調の床であり、営業終了後は全体的に茶色くなってしまうという問題との格闘からスタート。
1日の来店者は70人程度であり、清掃の為の雇用もままならない状況であった。
クリーン化を実現は集客の絶対条件であり、営業終了後は7時間以上におよぶ清掃を続ける日々を重ねる。
三か月が経過しても86人/日という微増で苦戦するもいつの間にか常連となったお客さんから来店理由が「床が滑らず、衛生的である」とのコメントを聞くことが出来たので何かのきっかけで再生できると確信。
中古の廃油ボイラは常に不機嫌なため、廃油を諦め薪のみを熱源とすることを決断。
薪回収の効率を考え、回収車を軽トラから1.5トンに買替し、作業の効率化を図る。
馬車道とう京王道路と首都高速の中間に位置する千葉方面への一方通行道路の立地のため、交通量の多い時間帯では、信号待ちの車が店前まで並ぶことがわかり、非営業時間中でもシャッターに営業時間を大きく掲示することで情宣になるため、車からでも読み取れる大きな掲示を心掛けた。
日常会話に支障はないモンゴル出身の女性がフロント業務に従事すると客数は100人/日弱まで伸びてきた。
(70人/日からの30人UPに7カ月を7カ月を要する。)
日本語を習得するために、入浴後にフロントで寛ぐお客さんに紙とペンを持って一生懸命に話しかけて日本語を習得しようとする姿勢にお客さんが喜んで応えてくれていたのである。
高齢者中心の店舗であり、お客さん自身も店員さんの日本語上達に一役かっているという構図が来店動機につながったという、微笑ましい銭湯ならではのケース。
隣接地および店舗向い新築マンションが完成し、入居が始まると、徐々に数字に反映してされ、近隣の銭湯が廃業すると130人/日まで到達した。
ここまで、実に12カ月を要した。
損益分岐が130人/日であり、1年をかけて何とか事業化までたどり着く。
2017年7月(運営開始から2年)では、160人/日まで数字を伸ばし、業務の標準化も進み、特定の人間が過酷な業務負荷を背負うことなく運営できる体制となった。
しかしながら、感染症の営業規制により客数は減少傾向にあり、新たな取り組が必要である。
狭い、日常利用銭湯であるが故に、設備的にも改善は難しくSNSでの情報発信のみならず、手書き看板の設置および更新などの地道な努力の積み重ねにとどまっている。
閉店後、マンションへ。
マーケティングの失敗事例
江戸時代から店名を変えながらも続いてきた羽田空港に最も近い銭湯。
後継者不在で、当社が運営を開始。
熱源はガス、地下水はナシ。
店舗の前の道は、すぐに多摩川河口に突き当たります。
釣りバカ日誌の浜ちゃんの自宅になっていた場所です。
手入れの行き届いた浴場は、ちょうどよいサイズの白湯、広めの薬湯、ガスサウナ、水風呂はありません。
熱源がガスであれば、営業時間中は一人でのオペレーションが可能であるため、深夜2時までの営業時間を設定。
前経営者から期間を空けることなく運営開始。
開始月は121人/日からのスタート。
半年以内に150人/日の目標設定をしたが、思うように客数が伸びませんでした。
年中無休 深夜2時まで 土日祝朝風呂あり
■「Wi-Fi」
■「シャンプー・ボディソープの備付」
■「無料ドライアー」
■「ウォーターサーバー設置」
店の前の通行人に深夜営業を情宣すれば客数が増えると見込んでいたのです。
ところが、店の前の人通りは極めて少なく、車の通行もほぼありません。
店前の道は、すぐに河に突き当たりますので、通行人は店より河に向って存在している家の方だけだったのです。
深夜に来てくれるお客さんの中心は、穴守稲荷付近の飲食店の方々でほぼ男性。
それは、商売人同士の社交場的要素があり有意義でしたが、絶対数が少なかったのです
客数が伸びなければ経費削減で調整しなければなりません。
24時過ぎの女性客は、ほぼゼロでしたので、女性のジャグジーを止めるだけで、大いに光熱費削減可能です。
しかしながら、装置的に片方だけを止めることが出来なかったのです。
開始1年後に133人/日(開始月より12人UP)
閉店前3か月こそ150人/日を超えたものの、さよなら入浴効果もありますので、純増とはいえません。
レンタル自転車の設置は喜ばれ、若干の客数増にはつながりました。
想定外だったのは、設備劣化で湯温の制御が効かず、挿し湯による温度調整を強いられた事でした。
常に、湯温を気にしながら、冷めてきたら80℃のお湯をカマから入れるので、二人でのオペレーションを余儀なくされました。
(これにより損益分岐が当初の想定よりも上がってしまいました。)そのような中で、所有者から建物を売却したい旨の相談があり、経営を断念することになりました。
立地を鑑みた丁寧な事前計画を怠ったことによる閉店とも言え、大きな教訓となりました。
繁盛店にすることが出来なかった故に、お客さんとはコミュニケーションを取りやすく、業務そのものは楽しく、漁師町特有のサッパリした気持ちのよい人達ばかりで閉店時のお別れは辛いものがありました。